2024 年1月。
年明けと共にヴォーカリストから看護師への転身を発表した有栖川 塁。自身の誕生日3/4 に節目となるワンマンコンサートをおこなった。
彼の20 年の音楽人生を辿る様に、 今までにリリースしてきたオリジナル曲を全曲ピアノアレンジで会場に届けた一部始終をレポートしていこう。
会場に入るとまず目に飛び込んでくるのは、 まるで某夢の国の様な照明とかすみ草に包まれた会場。
まるで映画館の様にステージが1 番下にあり、 後ろの席に行くほど席が高くなっているのが見やすくて嬉しい会場だ。
聞こえてくるのは、 記憶にもまだあたらしい未完成アリスの「2 次元ラヴァーズ」 やミサルカの「-Last Seane-」 など、 これまで彼が歌い世に届けてきた楽曲たち。
しばらくすると照明が落ち、 会場は〝海のさざなみの音〟に包まれる…。会場が波音でいっぱいに包まれた時、 波音の中にピアノの旋律が響く。
ミサルカのファンがまだ「人魚たち」 と呼ばれていた頃の方々であれば、 既にこの時点で胸が熱くなったのではないだろうか。
ようやくステージに姿を現した塁。
「今日は僕が最も信頼している最高のピアニストRyOくんの演奏で、 全曲オリジナルをお届けします」 とピアニストRyO の紹介をする。
RyO は同日の夜に自身のバンドArs Nøva のライブを控えている中での出演。
「僕が無理を言って…嫌な顔ひとつせず」 と語る塁。
彼がバンド活動の中でファンのみならず仲間達からも愛されてきた事がよくわかる。
ーーー Merrow-Karma-
「まずはミサルカの仲間たちと届けた〝人魚姫〟の物語から。」
まるで暗い海の上に誘われたかの様に会場が彼らの描く世界に包まれる。
〝声も出せず…ただ貴方を…想い続け…〟
人魚姫の切ない想いの中に、 どこか悲愴感の中に潜むホラー的な要素も垣間見えるMerrow-Karma-。
当時の衣装で歌い上げる姿に、 まるで過去に戻ったかの様な気持ちになったファンも少なくなかっただろう。
ーーー -Ariel-
「アンデルセンの原作で人魚姫は泡になって消えてしまいますが、 実は話に続きがあります。」ふたたび語り出した塁。
泡になった人魚姫は、 その後「風の精霊エアリエル」 となる。
さまざまな人を癒す旅にでた人魚姫と同じ様に、 塁は歌い始める。
~もしもこの歌が、 君の心を癒す事が出来るなら~
20 年間、 歌い続けてきた理由を丁寧に紡ぐ塁の歌を、 RyO の繊細かつ力強さを兼ね備えたピアノがしっかりと支えてゆく。
ーーー 2 次元ラヴァーズ
有栖川 塁の音楽人生を語る上で欠かせないのが、 様々な偉業を成し遂げたバンド〝未完成アリス〟だ。その姿を世間に初めて見せた時の曲、 2 次元ラヴァーズをピアノアレンジで歌い上げる。
〝未完成な少女の心模様〟をコンセプトに活動を開始した未完成アリス。
「ミサルカとはガラッと変わった容姿や音楽スタイルに当時はファンの多くを戸惑わせてしまった。 けれどミサルカを解散させるのだからこそ、 それくらい革新的な新しい事をやる決意と覚悟をもたなければならないとならないと思った。」
と塁は言う。
常に新しい世界に飛び込み、 挑戦し続ける彼だからこそ、 自らの経験を元に人々へ希望を与える事が出来るのかもしれない。
ーーー 国分町イデオロギー
「仙台の国分町に移り住んだ、 とある少女の話。」
ガラッと空気感の変わるポップなリズムとコード感ではじまった国分町イデオロギー。
RyO の奏でる軽快なピアノの音がとても心地よい。
〝あたしを変えられるのは誰でしょう?〟をテーマに、 生き方に悩む少女の感情の移り変わりを描いた一曲。
100 曲以上歌ってきたオリジナル曲から、 あえて自分の作曲ではなく和希(未完成アリスDr) の作曲した曲を選んでいる事から、 塁の和希に対するリスペクトの気持ちも垣間見える。
「和希は僕には作れない多彩な曲を作れる天才なんです」 と塁は語る。
ーーー 指切り
続けて歌い上げたのは、 逢えなくなってしまった恋人への切ない想いを綴った〝指切り〟。
塁が作詞作曲を手掛けた数ある曲の中でも長年温めて作り上げた〝和〟をコンセプトにした楽曲。旋律だけでなく、 歌い方も和の心〝コブシ〟を効かせた塁ならではの歌い方で歌い上げる。
ーーー -この歌よソラへ届け-
ーーー ~暁のソラへ…~
~君がもしもいなくなってしまったら、 悲しむ僕がココにいるよと伝えたい~
この部分の歌詞がコンサートで伝えたいメッセージの中で最も重要なのだと、 塁はRyO に言った。思い返す様に、 彼がステージで歌い始めた時のことをステージで語りだす塁。
20 年前、 彼の大切な女性が突然死んでしまった事。
その時に自分が何も出来なかった事を悔しいと思った事。その想いを一曲の歌に込めた事。
塁の最初のバンドLa neige で歌った曲を10 年後にミサルカのメンバーと共にリメイクした曲がある。同じ想い、 同じ言葉を使ってつくられた2曲を続けて歌うのは史上初の事だという。
「彼女と同じ様に苦しみを抱えている誰かを救いたい」
20 年かけて歌い続けてきた塁の想いが、 ソラまでしっかりと届いている事を皆が願った瞬間だった。
ーーー -Juliet-
インターバルをはさみ衣装チェンジをした塁が再びステージに舞い戻る。
「久しぶりにこの衣装を纏ったけど、 僕の通る道の後には、 こうして羽が落ちるんだったね(笑)。」懐かしい衣装に身を包み歌い始めたのはファン待望の-Juliet-。
彼自身「自分の作詞作曲した曲の中でも最高傑作の一つです」 と語る様に、 多くの人々から愛され続ける名曲を高らかに歌い上げる。
会場には歓声の声があがっていた。
ーーー -Jester-
数多くの名曲を生み出したミサルカの楽曲の中でも、 バンドのイメージを強く印象付けたのがこの-Jester-だ。
〝僕はピエロ、 貴女は魔女〟
からはじまる印象的な歌い出しは、 塁のアカペラから。
特に注目してお聞きいただきたいのがこの曲のラストのサビ部分。
魔女を愛するピエロが、 王子様に成り替わる(変装する) 事を歌声で表現した塁の真骨頂。配信チケットで録画を見返す際には何度でも見返てみたい。
ーーー Stargazer
塁が自分の人生のバイブルだと慕うGACKT 氏に、 新しく看護師の道に挑戦する事を報告した時にアドバイスされた「やるか、 もっとやるか」 の話。
今後はその言葉を座右の銘に生きていくと語ると、 未完成アリスが47 都道府県×2 周ツアーと赤坂BLITZ でのツアーファイナルを決めた時に作詞作曲したStargazer が始まった。
決意を胸に、 全国を旅した日々を思い返す様に丁寧に歌っていく。
ーーー 良音
続けて未完成アリスの代表曲である良音が始まる。
〝明日もしも僕がいなくなっても、 この歌で君がまた立てる様に〟まるでこの日の為に綴られたかの様な歌詞。
言葉に込められた想いが音となりファンへ届けられると、 会場には涙を堪えきれないファンの姿が多く見られた。
ーーー -Kanon-
ーーー -Last Seane-
会場にパッヘルベルのカノンが響き始めると、 会場に優しい空気が流れる。ジュリエットがロミオと結婚するシーンを描いた-Kanon-。
そして、 その後駆け落ちを決意したジュリエットが仮死状態となりロミオを待つシーンを描いた-Last Seane-。
~貴方に出逢えて、 私はこんなにも幸せ~
物語に乗せて塁が伝えたかった想いが、 会場内に溢れていた。
ーーー Last Letter
この日、 最後に届けられたのは塁が「有栖川 塁」 としてソロデビューした時にリリースされたLast Letter。
「〝遺言〟を遺しておこうと思って作った曲を、 今日は最後に届けます。」人はいつどんな運命を辿るかわからない。
だから僕を愛してくれた皆に、 遺しておきたい言葉を音にした。
これは遺言という名目で綴られた、 塁からの感謝の手紙なのだろう。
有栖川 塁というヴォーカリストが確かに其処に存在していて、 そのヴォーカリストが愛されながら歌ってきた事を証明するかの様に音と言葉が会場を包み込んでいく。
優しさと感動の涙に包まれた有栖川 塁のワンマンコンサートはこうして幕を閉じた。
現在発表されている有栖川 塁のライブ予定は5/30 「雨祈る」 のみとなるが、 MC の中で彼から伝えられた「今はまだ言えないのだけれど、 実は5月にとっておきのサプライズを用意しているから、 楽しみにしておいて。」 という言葉を楽しみに、 このレポートを終わりたいと思う。
TEXT:河上真琴
★インフォメーション★
2024/05/30(木)
LEGENDARYWORKS presents 『Kururu 生誕祭~ 海と雨と人魚と鯨のオーケストラ~』
<出演>
悪魔行軍(2軍)
雨祈る
VERTICAL
Zeke Deux
ジグソウ
SIRENE
モンストロ
LIBRAVEL
——————-*
OPEN 15:30 / START 16:00
前売 \4500- / 当日 \5000-(ドリンク代別途)
[TICKET]
A チケット:3/17(金) 10:00 ~ PassMarket
■購入ページURL
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02x6c1xa3dk31.html
B チケット:当日券
※ バンド予約なし
※ 入場順: A →B
主催・企画/ 制作:LEGENDARYWORKS
問:legendaryworks.official@gmail.com