僕らが闘うべき敵とは、常識を逸脱した理解不能な存在なの?演劇集団「生き逃げ」が最新舞台劇を通して示した「正義のヒーロー」。それ、本当なら一般市民のあなたのことじゃないですか?!

演劇でありながら、まるでライブを味わっているような興奮をその舞台は与えてくれる。ミュージカルとは違う。あくまでも舞台劇…いや、舞台という体を成しながら、キャストたちがそこへ描き出すのは、役柄を通し一人一人が”人間”をさらけ出す告白の場。
“生きることから逃げないために、あの日僕らは逃げ出した”というユニット名が語るように、彼らが舞台に描き出すのは、「自分の心の弱さゆえ、これまでに目を背け、逃げ続けてきたみずからの人生への後悔」。その結果囚人と化した彼らが、「絶望しかない日々の中、どんな小さな希望を見いだすか」「どんな風に人の心の真実を見つけるのか」。その過程の姿とそのときごとの答えを、彼らは囚人という肉体的な自由を奪われた囚われの身に姿を変え、連なる物語(各公演)に描き続けてきた。
キャストたちが舞台の上でさらけ出すのは、情けない自分を悔い、絶望しかない現状をわかったうえで、それでも生きる意味を見いだそうともがき苦しみ、時に悲哀を隠そうと笑いあう姿。その物語を、彼らは舞台劇を軸に据えながら、その中へ歌も組み込みながら伝えてゆく。
だから彼らは、新宿LIVE FREAKというライブハウスをホームグラウンドに公演を重ねている。観客たちが彼らの物語へ触れるのも、共に熱を感じ、「生きることのつらさと喜び」に何時しか共鳴し、声を張り上げ、身体を動かし、同じよう彼らの仲間となり、生きることから逃げない自分になって心の叫びを全身で放とうとしてゆくからだ。

1月31日から2月2日にかけ、「生きることから逃げないために、あの日僕らは逃げ出した」(以下、生き逃げ)は、新宿LIVE FREAKを舞台に第三回公演『脱獄戦隊ニゲルンジャー~さよならキャベジン先生~』を行なった。彼らは、今回のライブ劇を通し、こんな説明を示してきた。

<STORY>
このまま人類の終焉をただ黙って見ているだけでいいのか。
逃げる場所すらなくなっちまうぜ。
お前ら、地球を守って来い―――

諦めかけた未来を取り戻すために横シマな囚人達が今、立ち上がる。
愛と勇気と感動のスペクタクル巨編。

あなたにとって俺たちは、正義なのか悪なのか、それともただの都合のいい男なのか!

生き逃げのスタイルとしてある「舞台寄り」「LIVEやSHOWを盛り込んだエンターテイメント寄り」二つの表現。今回は、強いメッセージを持った舞台劇を軸に据えて描き出していた。
タイトルへ「脱獄戦隊ニゲルンジャー」と記したように、当舞台の軸に据えていたのが「地球を救うために選ばれた日本の囚人たちが、正義のヒーローとなって襲いかかる敵をやっつける」という内容。望んでもいないのに地球を救う正義のヒーローに名指しされた8人の囚人たち。8人は権力者たちの気まぐれに振りまわされるまま、戦隊ヒーローとしての訓練へ身を投じることになる。
最初は拒否反応を示していた彼らだが、「ヒーローの使命とは何か」という命題を突きつけられていく中、囚人ヒコボシは、自分は輝くアイドルスターになりたかった夢を取り戻せば、敗戦し身を落とした時雨は、自分がヒーローとなって輝ける喜びを覚えていた。銘々が成りたかった自分の理想を、ヒーローを疑似体験しながら甦らせてゆく。あきらめた夢を取り戻す過程を描く中へ、誰もが自分の気持ち次第で輝ける可能性を持っていることを、この物語は教えてゆく。

戦隊ヒーローとして実戦の場へかりだされた8人が対峙したのは、環境汚染によって生まれた怪獣のガラムマサラ。怪獣は、日本を襲撃しに来たのではなく、環境汚染によって海の生態系が壊され、自分のようなモンスターが誕生したことを啓発しに来ていた。その事実を知り、怪獣を倒すのではなく、その想いを伝える側に立った囚人たちだったが、政府(世界)はその理由を聞こうともせず、異分子を殲滅することが正義(自分たちの枠にはまらないものは排除せよ)とばかりに怪獣を攻撃しだした。悲しい運命を背負って誕生した海人(怪獣)を攻撃から守るため、みずから身体を張って銃弾を浴び、息絶えるキャベジン先生。やがて集団たちは。「人類だが忌嫌う怪獣を作りだしたのが、人間自身のエゴであること」を知ることなる。
人間の心とは、その人の意識の持ち方次第で毒にも薬にもなる。それこそ、ヒーローにもモンスターにだってなれる。あなたは、今の世の中の現状を知ったうえで、それでも自分の都合を優先し、後に怪獣(悲劇)を生み出すことの手助けをするだろうか。それとも、その行動へ「NO」を突きつけるだろうか。日々の暮らしに当たり前にあるゴミの分別にしても、そう。そんな人類の身勝手により生まれたのが、海洋プラスチックゴミや汚染水が影響を与え生み出し、奇形となったガラムマラサという存在。彼は、海が汚染されていなければ生まれることはなかった。寿司屋に並んだ寿司ネタに異臭を覚えるのは寿司屋の責任ではない。その魚を生み出す環境を、汚染を通して作りあげた人類にある。
文句を言うのは簡単だ。でも、その元凶を正さない限り、文句の題材が深刻さを増すのみならず、何時しか我々の身体さえ蝕んでゆく。

生き逃げが公演を通して毎回伝えているのが、「あなたは、見たくない自分の何を封印したのか」ということ。誰もが、見たくない現実から目を逸らすのは簡単だ。でも、それによって生じる未来がどうなるのか…。それは社会的なことよりも、その人自身に関する問題にもなっていく。苦労や苦悩という生きることの大変さから逃げ出した人が、やがてつかむ未来。生きるつらさを知ったうえで立ち向かった人が、後に手にする未来。その答えを示すのはその人自身なので、ここで結論は示さない。「生き逃げ」のメンバーたちも、大成を夢見ながら、小劇場という沼にどっぷりとはまった人たちだ。でも、彼らは知っている。「成功」という形が、メディアで持て囃されることではないことを。「人の心を動かすこと」が、役者として持つべきヒーロー像であることを。

次回の生き逃げ公演は、3月4日にTSUTAYA O-WESTを舞台に行なわれる。支持の高まりを受けたことで繋がった数百人規模の会場。それだけ今、生き逃げの舞台を観たいと熱望する人たちが増え続けていることの証明だ。予想となる言葉にはなるが、「第三回囚人博覧会」と題したTSUTAYA O-WEST公演は、メッセージ性を込めながらもエンターテイメント性を強く押し出した作品になりそうだ。
「生き逃げ」という存在に興味を示した未体験の方は、ライブ感覚の強いTSUTAYA O-WEST公演から楽しんでいただくのも良いかと思う。そこではまったなら、囚人たちが織りなす泥臭い人間模様をぶちまける物語へ、どっぷりとはまっていただきたい。


TEXT:長澤智典

第三回囚人博覧会(O-WEST)

★オフィシャルサイト・SNS★

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https://ikinige.therestaurant.jp/
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★インフォメーション★

『第三回囚人博覧会
~拝啓 お父様、お母様、渋谷の牢獄の中で僕たちは~』
◆公演日時:2020年3月4日(水)
OPEN 18:00/START 19:00
◆会場:渋谷 TSUTAYA O-WEST
URL:https://shibuya-o.com/venues/tsutaya-o-west/

<チケット料金>
前売り¥4,000/当日¥4,500
※受付時に別途ドリンク代¥600がかかります。

<チケットの購入・予約方法>
■ご購入(事前精算)
①eプラス先行発売:終了いたしました。
②ライブ会場限定発売 先行入場チケット:2019/12/8(日)~発売中
※入場順はeプラス先行チケットの次になります。
③eプラス一般発売:2020/2/1(土)PM14:00~発売中
https://eplus.jp/0304-west/

■ご予約(当日精算)
④生き逃げHPよりメールで予約:2020/2/1(土)~
※HPの”CONTACT”のフォームよりお申込みください。
【メールで予約する】
https://ikinige.therestaurant.jp/pages/2477149/contact

<入場順>
①eプラス先行
②ライブ会場限定先行入場チケット
③eプラス一般
④メール予約
※ご購入のチケット券種によって入場の順番が変わりますのでご注意ください。

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