2006年5月1日、ZEPP TOKYO。悲しみに暮れる2千人を越すファンたちの嗚咽と絶叫を身体中に染み込ませながら、「卒業(解散)」という言葉を持ってMASKは活動を止めた。当時、ヴォーカルの尽(HERO)は、まだ10代だった。リーダーの未散は、この日を最後に表舞台からは姿を消してしまった。
時の流れは、様々なドラマを生み出してゆく。解散後、メンバー全員が音楽に携わり続けてきたからこそ「有り得ないこと」が「現実」にもなる。
10年の歳月を経て…。10年後となる2016年5月1日にMASKは、ZEPP TOKYOを舞台に「一夜限りの復活」ライブを行った。MASKは、第一期/第二期メンバーという2つの形態を持って活動してきたバンド。その2つのスタイルをこの日披露することから、かつてMASKに熱狂してきたMASKER(ファン)たちは、その事実を知ったときから、この日をずっと心待ちにしていた。MASK解散後にメンバー個々が活動を続けていく中、それぞれのファンになった人たちも、彼らのルーツに色濃く刻印されたMASKの存在へ興味を示し、チケットを手にしていた。中には、時の流れを経て「伝説」と化したバンドに興味を抱き、この日足を運んだ人たちもいた。
チケットは発売後、瞬く間に完売。つい先日も、求める声の多さから使用予定の無かった場所まで開放。そのチケットも売り切れたように、会場は大勢のファンで詰め尽くされていた。
この日は「GOAL~ループ開き~」と題したように、未散率いたLOOP ASH時代のバンドが集結。現在も活動中のアンティック-珈琲店-を筆頭に、SCISSOR、HeaRt、カミカゼ少年團が期間限定で復活。MASKの復活に華を添えてくれた。
ライブは、「MASK第一期」から幕を開け、それぞれのゲストバンドのライブを挟み、「MASK第二期」のライブが行われる形で進行。
SE『お通しパレード』を背にしての登場。「真の終わりを迎えるには始まりを知ることが大切、俺たちがMASKだ!!」、AOIの言葉を受け『赤裸々ノイローゼ』から幕を開けたAOI(Vo)+SANA(G)+MICHIRU(G)+KAZUTAKE(B)+NANA(Dr)による「MASK第一期」のステージ。当時はダークでハードエッジな音楽スタイルを軸に据えていたように、終始突き刺さる激しい音を突き付ければ、AOIに至ってはデスボイス混じりに観客たちを煽り続けていた。激しくワイルドに、暗鬱な色に塗りつぶしたロックナンバーの『赤裸々ノイローゼ』を用い、5人はMASKERたちを煽りだした。
「合わせ鏡の中…」。『Gemini』が導いたのは、激しさと、その中に隠し持った哀切な表情。デスボイス混じりに攻めの姿勢でMASKERたちを煽り続けてゆくAOI。演奏陣もソリッドでダークな音を次々と放ち、MASKERたちに痛い恍惚を突き付けていた。闇を携えたMASK、その姿はなんて黒く華やかなんだ!!
「壊れちまえよ!!」。激しいブラストビートが炸裂。理性を一気に破壊するように、狂気の刃を剥きだし『XxxXマスター』が襲いかかってきた。今の時代のダークさとは異なる、そこには妖しい華がある。いくら激しく攻めようが、身体が黒いウネリに溺れようと、そこには痛い優しさを覚えてゆく。
「10年ぶり、俺とNANAくんは13年ぶり。まさか13年後にこの日が訪れるとは夢にも思っていませんでした。今、この瞬間はこう名乗らせてください、MASKです。10年、13年と月日が経つと、俺たちは美化されていくと思うんです。君たちがこの瞬間に期待して集まってくれてた以上の姿でいけるか不安だったけど。久しぶりにこのメンツの顔を見た瞬間「いける!!」と思いました。この5人のMASKが最高だよな、そうだよな!!最初からクライマックス迎えちゃっていいよな!!俺たち5人の13年分の想い、余すことなく持っていけよ!!」
場内を染め上げた真っ赤な光。『赫い盲目』が流れ出すと同時に、会場中の人たちが思いきり頭を振り出した。痛い痛い奈落へ引きずり込むよう激しく妖しい調べを持って、MASKが満員の観客たちを赤い熱狂の中へ巻き込んでゆく。サビで響いた嘆きの歌、激しく狂わせるだけではない、心をチクチクと涙な思いを持って突き刺してゆく。咲かずにいれない。酔わずにいれない、何より、嘆き騒がずには、この高ぶる衝動を抑えるなんて出来やしない!!
ヒステリカルなギターの旋律が高鳴りだした。MASKERたちを挑発するように流れたのが『一見氏』。理性という言葉はすでに忘れてしまったよ。ただただ黒い刃剥きだした音楽へ、興奮した感情をぶつけてゆくのみ。それが、感情を壊した人たちにとって一番最適なルールなんだもの。
MICHIRUの哀切なギターの旋律の上で、切々とAOIが歌いあげてゆく。涙気分誘う幕開け。だが、ドラムカウントが加わると同時に、楽曲は一気に黒い唸りを上げて駆けだした。エキセントリックな『東京トリックシアター』が理性の螺子をどんどん緩めていく。激しさと嘆く想いが交錯する中、MASKが描き出したドラマへ、誰もが熱狂携えつつも魅入っていた。何時までも、夢見る少女でいてもいいよねと5人へ伝えるように。
「俺たち5人はこれで終わっちまうぞ!!イケるかー!!!!!。色鬼、始めましょう」。第一期MASKの最後を飾ったのが、つねにライブで絶叫と絶頂の宴を繰り広げてきた『色鬼』だ。「鬼さん」「こちら」「手のなる」…メンバーの誰もがステージ前ギリギリまで駆け出しては、MASKERたちを煽り続けていた。舞台最前線では逆ダイのバトルを繰り広げれば、大勢の人たちがガンガン身体を折り畳んでゆく。巨大なZEPP TOKYOがまるでO-WESTクラスの会場に見えてきたように、誰もが狂った鬼と化し、煽り続けるMASKの演奏へ溺れ続けて逝った。君が今騒ぎ続けているビジュアル系のライブスタイルのルーツが、この日、この会場に甦っていたんだよ。この5人の導きによって…。
SE『WE ARE MASKER』での登場。10年前の感動を再現するように、ステージ場へ桜舞い散る演出を施した『桜』からスタートした尽(Vo)+SANA(G)+未散(G)+和矛(B)+MINAMI(Dr)による「MASK第二期」のステージ。天空から降り注ぐ無数の桜の花びらを浴びながら、尽はたおやかに、艶やかに『桜』を歌いかけてきた。なんて、美しも華やかな幕開けだ。駆けだした演奏に合わせ、会場中を埋めつくした手の花も大きく大きく咲き誇ってゆく。この瞬間だけは、この会場に満開の桜の風景が広がっていた。
SANAの奏でた美しい旋律。「逆ダイだ、飛んで来い!!」、尽の叫びを合図に、演奏は一気に激しさを持って走りだした。MASKERたちの騒ぎたい衝動を『Boys be ambitious』が熱く熱く煽ってゆく。舞台前方では逆ダイの風景広がれは、場内には無数の荒れ狂う髪や大きく揺れる手の花が咲き続けていた。
「10年前みたいに声をくれっ!!」と叫ぶ尽。「MASK、10年ぶりですね。AOIさんハードル上げ過ぎ、俺たちがMASKだと。そのとき袖にいた俺の心境考えてください。あなたもMASK、私もMASK、一緒だと」。ここで尽がAOIを巧みにいじってゆく。そこが、尽らしさ。
「10年前のライブに来た人」の問いかけへ手を上げた人たちに対し「ばばぁ……ばっはぁーと言っただけだから」など、何時も通りの壊れたMCで、尽は場内を爆笑の渦に包みこんでいった。
「老いに負けるなー!」の声に続いたのが、『世の中の日常で頻繁に起こる今ではごく当たり前とされている出来事』。気持ちをガンガン煽る演奏に刺激されたMASKERたちも、手バンしながら高ぶった想いを舞台上へふつけていた。どんどん上がってゆく会場の熱。
歌始まりの『C』が優しく場内に響きだした。哀切な想いを吐きだすように、切々と歌い上げてゆく尽。触れた人の心に悲しい涙を呼び起こす、なんて哀愁な表情なんだろう。
気持ち潤す様を受け継ぐ形で、SANAの爪弾くギターの旋律が優しく流れだした。ゆったりとビートを刻むMINAMI、その上へソッと音を重ねてゆく和矛と未散。尽が「『空』」と叫んだとたん、楽曲は一気に青春の息吹携え、心地好く駆け始めた。「10年前みたいに咲け!!」、尽の言葉へ呼応するように、場内を中を埋めつくした揺れる手の花・花・花。MASKERたちを煽りながらも、愛情を込めて歌いかけてゆく尽。その優しさが嬉しいじゃない。誰もが、笑顔で想いを返したくなるのも納得だ。
「また何時かやれたらいいな」。尽の言葉に続いて、ライブは終盤戦へ。轟くドラムビートに合わせ、ダークな装いを持った楽曲が激しく流れだした。『求めたゆえに残ったもの』に合わせ跳ね続けるMASKERたち。最前線では逆ダイしてゆく人たちも。時には挑みかかるように、時には朗々と歌いあげてゆく尽。♪ARE YOU READY♪と歌いかけながら、彼はMASKERたちの 感情をどんどん高ぶらせていた。
「今日絶対に悔い残すな。今日を全力で生きろ!!」。明るく開放的な表情と、激しく華激な様を様替えながら気持ちを煽ってゆく『ローズ・マリー』に合わせ、場内に産まれた暴れ祭る風景。開放的な表情抱いたサビでは、超高速な手バンも炸裂。尽の歌が招くままにはしゃぎ続けるMASKERたち。場内の熱はどんどん上がってゆく。誰もが心を笑顔で開放しながら。そして…。
第二期MASKの最後を飾ったのは、やはりこの曲。心に光をを射してゆく『未来への翼』だ。尽はWAVEを導こうと左右に走りだした。誰もが、感情を嬉しく弾ませる歌へ寄り添っては、空に向かって両手を羽ばたかせていた。騒ぐだけがライブじゃない、気持ちへいくつもの希望の羽毛を与え心を翼に変えてくれるのも、音楽の楽しさ。それを10年以上前から示していたことを、改めてMASKに教えられた。自分の想いが光へ向かってさえいれば、何時だって飛べる。誰もが頭上高く大きく両手を広げ、舞台上の5人へ「ありがとう」の気持ちを届けていた。
ふたたび、第二期MASKがアンコールに登場。「10年ぶりです。ここまで10年間別々の道を歩いたけど、最終的にここに集まれて良かったです。何時まで歩けるかわかんないけど、メンバーみんなこれからも一生懸命歩いてくから、また一緒に歩いてくれたら嬉しいなと思います」と語ったのは尽。その言葉を受けて奏でたのが、メンバーの名前を叫ぶ『コ~ルナンバ~』。会場中の人たちが、尽の煽りに合わせ、各メンバーへ熱いエールを送り続けていた。終盤には第一期メンバーのNANAとAOIも参加。ついにここで計7名による第一期/第二期MASKが誕生!!
「AOIさん、俺もMASKです」「尽くん、いろいろあるんです」と会話したのは、尽とAOI。「GOALは未来へのSTARTへ繋がっている」とAOIが述べつつ、総勢7人となったMASKが最後にぶつけたのが、ライブで熱狂と絶叫を作りあげるに相応しい『色鬼』だ。
「鬼になれますか!!」とAOIが煽れば、NANAが「鬼さんこちら 手のなるほうへ」と煽りだした。そして、AOIの「色鬼始めましょう」の声を合図に演奏がスタート。AOIと尽の歌の掛け合いや煽り、演奏陣の轟く激しいプレイに煽られ、会場中の人たちが一斉に暴れだした。「鬼さん」「こちら」「手のなる」の叫び声に合わせ、場内に生まれた大きな逆ダイの光景。2千人を越す観客たちがフロアー中で暴れ続ける様のなんと壮観なことか。SANAに至っては客席へダイブ。MASKERだけじゃない、メンバーらも理性を壊し、身体が導くがまま狂った鬼に成り暴れ続けていた。
MASKとしての伝説は、これで永遠に封印されるのだろうか!?。今のシーンに刺激を与えてゆくに相応しい個性を持った音楽に触れながら、つい勝手な夢を求めてしまう。そう思っているのは僕だけじゃないはず。そんな僅かな希望を抱きつつ、再発されたベスト盤『MASKING』を聴きながら、この日の余韻に浸ろうか。。。
PHOTO:菅沼剛弘
TEXT:長澤智典
―セットリスト―
<MASK第一期>
~SE~『お通しパレード』
『赤裸々ノイローゼ』
『Gemini』
『XxxXマスター』
~MC~
『赫い盲目』
『一見氏』
『東京トリックシアター』
『色鬼』
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<MASK第二期>
~SE~『WE ARE MASKER』
『桜』
『Boys be ambitious』
~MC~
『世の中の日常で頻繁に起こる今ではごく当たり前とされている出来事』
『C』
『空』
~MC~
『求めたゆえに残ったもの』
『ローズ・マリー』
『未来への翼』
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EN(MASK7名セッション)
『コ~ルナンバ~』
~MC~
『色鬼』
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