彼女たちは、「今が最強であり、最狂のメンバー」と口にしてきた。maleficiumの創設メンバー、夜縋らるむとCHIHO FUKUDA。maleficiumに赤い衝撃を降り注いだ、アルカード・アリス。新加入のセシルは、maleficiumに新しい化学反応を引き起こした。そんな4人だからこそ生まれたのが、最新配信シングル『Noir〜ノワール〜』だった。同曲を発表してからのmaleficiumは、より攻撃性を際立たせた楽曲に乗せて感情を剥きだしたライブ姿を毎回見せてきた。進化や変化を貪欲に求める彼女たちが、今ある一つの進化の形を示すべく、4月6日に渋谷チェルシーホテルでワンマン公演「Noir~赤と黒が交差する背徳の晩餐~」を行った。新衣装のお披露目公演にもなった、満員の観客たちを前にしたこの日の模様を、ここにお伝えしたい。

今宵のmaleficiumのライブは、破壊的な音を轟かせ、その上で4人が叫ぶような声でハーモニーを描きだす『Noir』から始まった。感情を剥き出しに、観客たちを煽る夜縋らるむ。その煽りを蹴り上げるように、CHIHO FUKUDAの歌声が高らかに響きだす。フロアでは、早くも感情のストッパーを壊し、観客たちの頭の上をクラウドサーフをする人も現れた。「狂った華咲かせてみせましょう」の歌詞のように、フロアにいる大勢の人たちが、絶叫の声の花を咲かせていた。爆音を唸らせ、凄まじい勢いで駆ける楽曲の上で、メンバーらと観客たちが、奮い立つ感情を剥き出してぶつけあう。ライブはまだ始まったばかりだ。なのにこの空間には、早くも火傷しそうなほどの熱が生まれていた。
そこへ、「なぜ悲しいの? なぜ傷つけるの 私たちどこへ向かうの 教えてよ」と嘆くように歌うCHIHO FUKUDAの声が響き渡った。その声を受け、夜縋らるむが「この会場を真っ黒に染めてやる」と叫ぶのを合図に、感情を切り刻む音が轟きだした。『Ēlysion』だ。痛み、苦しむ感情を、彼女たちは熱く奮い立つ気持ちに変え、全力でぶつける。その声に魂を奮い立てた観客たちも、荒ぶる感情の引き金を次々と弾くように、雄々しい声を上げて暴れ続ける。絶叫と絶叫がぶつかりあう、その様が凄まじい。彼女たちは歌っていた、「なぜ惑わせるの?」と、むしろ狂おしい熱狂の空間の中、もっともっと心を惑わせてほしい。
熱狂する観客たちの頭上へ重厚な音の鉄槌を振り下ろすように叩きつけた『lament』では、4人とも雄々しき声を刃のように研ぎ澄ませ、気持ちを奮い立て、観客たち一人ひとりの胸へと突きつけてきた。サビで4人が荒ぶる感情を一つに雄々しく歌う声が、魂を痛く揺さぶる。今はただ、甘美なリズムとノイズのような攻撃的な音のウネリに身を投じて暴れ狂っていたい。だから、狂った司祭と化した彼女たちが、『ユダの接吻』を通して全身全霊で迫ったヒリヒリとした痛い歌の口づけさえ、全力で受け止めていたかった。彼女たちの声の洗礼を全身に浴びながら、熱狂とカオスな音の渦の中に溺れていたかった。
思いきり歪みを上げた攻撃的な音が襲いかかる、『Ragnarok』の登場だ。カオスでノイズな音と彼女たちの妖しくもエモーショナルな歌声が、凄まじい勢いで爆走する楽曲の上で絡み合う。彼女たちが横一列に並び、雄々しき声の洗礼と浴びせ、煽り続ける姿が、神々しい戦いの女神のように見えていた。

激しさと美しさが交錯する広大でシンフォニックな世界を創り出す『DUALIS』や、勇壮でシンフォニックな音色が、観客たちを異世界へと導いた『EDEN』では、魔境のオペラ歌手となって歌う彼女たちに向けて、フロア中から無数の拳が突き上がっていた。CHIHO FUKUDAの深みのある歌声が、触れた人の魂を震わせる。一人ひとりのセリフが、興奮へと導く誘いの言葉になる。胸を揺さぶる美メロウな歌声とゴシックでシンフォニックな曲が折り重なり、この場に甘美な世界を描きだす。これは堕天使たちの戯れ?今は、この楽園の中、4人の黒い堕天使たちと一緒に宴に興じていたい。そのうえで、美しくも煌めいた音が流れだす。そこへ4人が「刻を超えてゆけよ」と凛々しい声で歌いだした、『Fortuna』だ。4人が想いを一つに「刻めこの思いを」と歌い上げるその声に魂を奮い立てた観客たちが、左へ右へと駆けながら、彼女たちの姿を道標に暴れ狂っていた。
重厚で激しいシンフォニックな音色が響きだした。その上でメンバーらが叫ぶのを合図に、楽曲は一気に荒れ狂いだす。maleficiumのライブに黒い熱狂の景色を作りあげる『Distopia』だ。美しくもエモい歌声の調べに心を踊らせながらも、轟音シンフォニックでゴシックな音の洗礼に触れ、身体を大きく折り畳み、拳を振り上げずにはいられなかった。まるで黒い洗礼を受けた人たちを漆黒のユートピアへと導くように、彼女たちは世紀末をつかさどる破壊の女神となり、甘美な歌声の調べで観客たちの理性の螺子をどんどん歪ませ、狂わせていく。さらに美しくも狂熱の世界へと連れ出すように、maleficiumは『月は無慈悲な夜の女王』を歌いだした。CHIHO FUKUDAと夜縋らるむの絡み合う歌声に導かれ、アルカード・アリスとセシルの煽りにひれ伏すように、ノイズのような黒い轟音の中、美しくも甘美に響く彼女たちの歌声に、心が嬉しく奮えていた。だから、彼女たちが誘うままに「Oi!Oi!」と声を荒らげ、魂を奮い立てるように拳を振り上げ、叫び続けていた。4人の感情と観客たちの気持ちが一つに重なり、この場を黒い熱狂の景色に染めあげていく。そのうえで…。


彼女たちは最後に、maleficiumの魂と言える『Stigmata』を叩きつけた。4人の煽る声に合わせて、フロアからも拳が突き上がり、声が張り上がる。彼女たちの歌声の一つひとつが、消えない聖痕として心に刻まれる。その刻印をもっともっと身体中に刻みたくて、フロア中の人たちが声を張り上げていた。幕開けから一切止まることなく爆走し続けた儀式は、今宵も『Stigmata』を通して、時を経るごとに熱く疼く印を全身に刻んでいった。終盤、メンバーと観客たちが共に声を張り上げてシンガロングしていた。雄々しきその声こそ、maleficiumから聖なる痕を刻まれた証。だから、誰もが沸き立つ気持ちのままに叫び、狂っていた。
アンコールは、今のmaleficiumの姿であり、未来を示す道標となった『Noir』を、ふたたび轟音を唸らせて始まった。魂を奮い立てた4人の声が突き刺さる。理性を破壊する衝撃を全身に浴びて、狂わずにいられない。夜縋らるむの煽りを受け、フロア中に生まれた折り畳みの景色。CHIHO FUKUDAと夜縋らるむの雄々しき歌声を中心に、4人とも拳を高く突き上げ、フロアを黒い熱狂の花園へと染め上げる。彼女たちは、この場にふたたび黒い熱狂の花を咲かせていった。
最後にmaleficiumは、全身に熱を帯びた観客たちを甘美な宴へと連れ出し、ともに戯れようと、黒い翼を大きくはためかせながら『私を天国へ連れてって』を歌い、観客たちを熱狂と恍惚の舞台へと連れ出した。エモくてメロい歌を魅力にしたインダストリアルでゴシックな楽曲の上で、麗しき堕天使となった彼女たちが、ここにいる人たちを、天国という名の奈落へ落としていった。彼女たちが黒い翼を羽ばたかせて連れ出した、その先に、あたはどんな景色を見ていただろうか…。それは空虚な世界?それとも、光り輝き、黒い花咲く希望の世界?その答えを探しに、またmaleficiumのライブに足を運ぼうか。


maleficiumは、11月9日に東京キネマ倶楽部で新たなワンマン公演を行うことを発表した。さらに、最新シングル『Noir』のMVも4月末頃より公開になる。こちらも楽しみに待っていよう。
PHOTO:藤岡祐一
TEXT:長澤智典
INFORMATION
次回単独公演は、11/9(月)東京キネマ倶楽部!
サブスク
https://www.tunecore.co.jp/artists?id=987682
YouTube
https://www.youtube.com/@maleficium-youtube
セットリスト
SE
『Noir』
『Ēlysion』
『lament』
『ユダの接吻』
『Ragnarok』
『DUALIS』
『EDEN』
『Fortuna』
『Distopia』
『月は無慈悲な夜の女王』
『Stigmata』
-ENCORE-
『Noir』
『私を天国へ連れてって』












