能登半島震災をきっかけに福井県若狭塗を施した1本 国産エレキギターメーカーCaramel’s Guitar Kitchen 12ヶ月連続新作プロトタイプリリース第3弾はオール漆塗り

古き良き音楽ルーツを匂わす独創的なデザインと斬新な企画で注目を集める福岡発のエレキギターメーカー「Caramel’s Guitar Kitchen(キャラメルズ・ギター・キッチン)」(※以下CGK)が12ヶ月連続新作プロトタイプリリースの第3弾 『PT3_Matsuba』を発表した。

今年1年をかけて毎月1本新作プロトを発表していくという前代未聞の企画だが、元ラーメン屋という異色の経歴をもつCGKクラフトマン片田武司(カタダタケシ)の自由な発想で遊び心とこだわりを詰め込んだプロト(試作)ハンドメイドギターで、世界に1本でありながら低価格で好評だ。

 

(木目の見える赤茶色)

 
今回のギターは2024年元旦に起きた能登半島地震をきっかけに制作されたという。その前年、2023年12月にCGKは福井県にある漆箸および漆工芸品メーカー”兵左衛門”(ひょうざえもん)の塗装によるコラボギターを制作し、同じく福井県の楽器店”Tabby’s Guitar&Music”にて販売を開始した。その準備のために何度か現地にも直接足を運んでいた。

 

クラフトマン片田武司(福岡の工房にて)

 
その発売からわずか1ヶ月後に能登半島地震が起こり、福井県で関わった人たちの顔が真っ先に浮かんだという。いちメーカーとして何かできることはないかと考えた末、漆塗りで1本のギターを作ることを計画し、すぐさま制作に取り掛かった。ボディとネックが出来上がった4月ごろ、兵左衛門に塗装の依頼をすると快く引き受けてくれた。漆の塗装は手間暇と乾燥に多くの時間を要する。何度か色味調整のやり取りを繰り返し、約1年を経てようやくこのギターが完成した。

 

(ボディ裏の木目も美しい)

 
CGKからのコメント
『~若狭塗の松葉という漆模様~

能登震災をきっかけに「なにかできることはないか」と考えました。被害の甚大さを目にした時、瞬間的に北陸地域の(我々が属する)楽器業界、2次3次産業の長期的打撃が想像できました。ちょうど前年2023年に福井県に何度かお邪魔してお世話になった皆様のことが心配になりました。飲食店も含め、趣味趣向品やカルチャーに携わる業態の回復は一番あとに遅れてやってきます。しばらく大変な日々が続くであろうと思いました。そこで、微力ながら皆様のお力に少しでもなれることはないかと考え、「若狭塗」を施したエレキギターを1本制作することにしました。兵左衛門様にお願いした漆塗りの仕上がりを見て、その職人技に感動いたしました。

果たしてこの微々たることでお力になれるのかわかりませんが、福井県の伝統工芸、若狭塗の「松葉」という漆模様を取り入れたギターが、なにかしら復興の一助となってくれたら幸いです。』

 

(松葉の模様は実際の松の葉で作られている)

 
ギターの基本構造は、CGKの既存モデルである”V3”タイプ。ボディとヘッドには福井県の江戸時代から続く漆器の伝統工芸である”若狭塗(わかさぬり)”が施され、木目が透けて見える赤みのある茶色が美しい。そしてピックガードには同じく福井県に古くから伝わる”松葉”という模様を施している。”松葉”とは、起こし模様の1種で、実際の松の葉で模様を作り、螺鈿(貝殻)や卵殻をまぶし、その上から漆を塗り重ね最終的に表面を研ぎ出して模様を浮かび上がらせる技法。そもそも福井県の若狭塗は、若狭湾の美しい海底の様子を図案化したものが起源であるとされている。

漆塗りというと厚塗りのイメージもあるが、CGKと兵左衛門のコラボでは漆を塗り込むのではなく、摺りこんで塗装するすり漆(拭き漆)という技法で薄く仕上げられているので、ボディの鳴りを妨げることはなく、アルダー材と相まって素直で煌びやかなサウンドが実現した。また、CGKの特徴でもあるチェッカードステッチは今回、漆職人によって丁寧に仕上げられている。

 

 

スペックは、CGKモデルのなかでもプロアーティストからの評価の高い人気機種”V3”と同じで、ボディ材がマホガニーからアルダーに変更されたのみで、ペグやコントロールがゴールドパーツとなっており高級感がある。

このギターはCGKオフィシャルオンラインショップにて本日より予約開始。発送は4月中旬予定とのこと。なお売り上げの一部を能登半島地震被災地への義援金として寄付される。

 

(シリアルNo.入り)

 
福井県ならではの伝統を取り入れたこのギターは、今回プロトとして1本のみ販売されるが、オーダーがあれば追加制作可能とのこと。いまだ復興のなかにある能登半島にゆかりあるギターに応援の意を込めて手にするのも良いだろうし、そうでなくても、この比類ない漆デザインの美しさに惹かれて手にするのも良い。

 

(ゴールドパーツで重厚感がある)

 
CGKは今後も毎月20日に新作をインスタやXやHPにて発表し、CGKオンラインショップまたは楽器店に置かれて販売される。製作段階で試行錯誤するプロトタイプなので普段より低価格。手作り感や作りの荒い部分もあるが、世界に1本のみなので貴重だ。

このプロトシリーズは上半期と下半期に分けてSNS上で「いいね」で投票してもらい、順位を決めていく。いいねをしてくれた方の中から抽選でプレゼントもあるとのこと。好評なギターは後々ラインナップに加えられ商品化される可能性もあるという。

 

(ロゴマークは木製)

 
新しい国産ギターメーカーのこうした活躍や自由な取り組みによって少しでも楽器業界の活性化、楽器人口の増加に繋がれば良い。3月29,30日には楽器の展覧会「横浜ミュージックスタイル2025」にも出店が決定しており、このPT3_Matsubaも展示される。直接ギターに触れることができるのでぜひ足を運んでみてほしい。次回4月はどんなギターが出来上がってくるのか?今から楽しみにしておこう。
 

photo by Takayuki Sasaki

 

★インフォメーション★

 

 
CGK_PT3_Matsuba

販売価格:200,000円(税別)/220,000円(税込)※ロゴ入りソフトケース付き

販売サイト: CGKオフィシャルオンラインショップ
URL:https://caramelsguitarkitche.stores.jp/
注)予約販売となり、発送は4月中旬になります。


Body:Alder
Body Finish:Urushi wakasa matsuba
Neck Material:Maple
Fingerboard:Rosewood 300R
Frets:22
Fret Size:Medium wide
Scale Length:648mm
Nut:Graph Tech NuBone
Pickups(Front):Roswell GoldFoil AlnicoV
Pickups(Bridge):SingleCoil Alnico V (made in Japan)
Switching:3-position(CRL)
Controls:MasterVolume×1(CTS) /MasterTone×1(CTS)(Gold)
Bridge:3-way brass saddle bridge/Double side cut(Gold)
Peg:GOTOH(Gold)
Strap Pin:GOTOH Ep-B3(Gold)

 

[イベント情報]
2025年3月29日(土),30日(日)
YOKOHAMA MUSIC STYLE
サイト:https://yokohama-music-style.com/
場所:横浜大さん橋ホール
時間:29日11:00-19:00
   30日11:00-17:00
入場:一般:前売 ¥2,500(税込) / 当日 ¥3,000(税込)
高校生以上の学生:前売 ¥1,100(税込) / 当日 ¥1,500(税込)
中学生以下:無料
※学生は入場時に学生証をご提示ください

 
Caramel’s Guitar Kitchen profile
2021年に立ち上げられた福岡発ハンドメイドギターブランド。その特異なデザイン性だけでなくこだわりのスペックでサウンドにも定評がある。手にしたときに「気持ちがグッと上がるもの」を作りたいをモットーに見た目と弾き心地を追求し続ける。昨年は福井県漆塗り業社とコラボギターを発売し、島村楽器とのコラボSTギターが発売前に完売するなど斬新な企画と話題を発信し続けている。

 
【Official CGK ONLINE SHOP】https://caramelsguitarkitche.stores.jp/

【Official CGK HP】https://caramelsguitarkitchen.net/

Instgram:https://www.instagram.com/cgk_guitar/
X:https://x.com/CgkGuitar

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